双亡亭壊すべしを読んでいて、藤田和日郎はやっぱりすごいな、泣けるなと思って、最後まで読んでいなかった前作月光条例を電子書籍で全巻買った。
藤田和日郎のからくりサーカスは自分の中でこの世で一番面白い漫画だと思うし、うしおととらも面白い。
漫画喫茶で号泣する
10年位前の話だ。
月光条例が連載開始して楽しみに最初のほうは単行本を買って読んでいたのだが、つまらない部分も多く、途中で買うのをやめてしまっていた。
ただめずらしく漫画喫茶に行ったときにその月光条例の続きを読んで、漫画喫茶で嗚咽レベルの号泣をしてしまった。
それが12巻13巻14巻の3冊だ。
で現在、電子書籍を買って読む。
正直、初見ではないし、漫画喫茶で号泣してしまったのも体調とか気分とかの要素もあったんじゃないかと思っていたから、そこまで泣かないだろうと思って読みはじめたのだ。
しかし、大号泣。
人生の中で、物語的なもので一番泣いたと思う。
体調的なものじゃなく確かにこの漫画の力であった。
チルチルという倒されるべきキャラクターの話
月光条例は昔話のキャラが青い月の光を浴びて、おかしくなって暴れてしまう、それを主人公月光が倒して正気に戻す話だ。
12巻~14巻で描かれる話は主人公の月光ではなく、青い月の光を浴びてしまった「青い鳥」の主人公チルチルがメインとして話が進んでいく。
青い月の光によって、サクシャの存在を知ったチルチルは自分たち兄妹を貧乏で辛い生活をするように、サクシャに話を書き直させるように言いに行く。
その中で月光条例の正義側の者たちにチルチルは襲われ、知らない昔話に迷い込んでしまう。
その話が「雉も鳴かずば」。
おそらくこの話は藤田和日郎が昔話で一番悲しい話として選んだんだのじゃないか。
そんなに有名じゃないのに取り上げたのはそういうことだと思う。
ベースの雉も鳴かずばという話がまずものすごく悲しい。
そこに第三者の視点としてチルチルが置かれることでこの話がどういうふうに悲しい話なのかを、天才少年漫画家である藤田和日郎が丁寧にわかりやすく描いていく。
元の話の悲しさが半端なくブーストされて、まずこの話で大号泣してしまう。
物語に存在する破滅のルール
この話を経て、チルチルが雉も鳴かずばの女の子を救えなかったことで、チルチルのモードが変わる。
次にマッチ売りの少女を助けようとするのだが、助けるには手段は選ばず、銃を撃ちまくる。
暴走していくチルチル。
物語において映画でもなんでも暴走したキャラクターは破滅の道に向かってしまうという物語のルールがある。
創作物においてルールなんて言葉は似合わないかもしれないが、何千何万の物語がそのルールに沿っていると思う。
だから、雉も鳴かずばで感情移入しまくってるチルチルが、読み手としては意識はしていないけど、破滅の道にノンストップで走っていくことに、感情が爆発してしまう。
涙腺も爆発してしまう。
そしてさらに藤田和日郎の決めゴマの感情に直結するような絵がすごく。
それによって目が溺れる。
是非読んでほしいなと思う。
ちなみに正直この3巻以外はそんなになので、読むなら12~14巻だけでいい。
話もそこだけでわかると思います。