ウェス・アンダーソンが描く、グランドブダペストホテルのコンシェルジュ、グスタフとロビーボーイのゼロの話。
ウェス・アンダーソンといえば、とにかくおしゃれな映像を撮る監督である。そのおしゃれさは、どのシーンを切り取ってもポスターにできるレベルで徹底されている。
監督の分かりやすい特徴としては左右対称のシーンが多いことだ。
今作はおじいさんになった元ロビーボーイのゼロが昔語りをする話なのだが、語られる昔のシーンが映画の縦横比率ではなく正方形に近い比率になっている。
そのことによって左右対称が作りやすかったのだろう、これまでのウェス・アンダーソンの作品以上に左右対称のシーンが多くなっている。
例えば寝台列車でグスタフとゼロが寝てるシーンを真上から撮って左右対称にしたり、
ホテルでの吹き抜け越しの銃撃戦を真下から見上げるアングルで左右対称にしたりと、そんなシーンまで左右対称にするかというところを左右対称にしている。
ちらっと映る奥の部屋に脚立が置いてあったりするのだが、ここにこれがあるとカッコいいでしょおしゃれでしょ以上の意味はないと思う。
ただ、その脚立によって映像におしゃれさが溢れでるのだ。
また、ホテルのお得意様の豪邸を歩くシーンがあるのだが、撮影に使った城がかっこよかったのだろう、コメディ的なノリで複数カットにわたってテクテク歩くシーンがあった。城のきれいさが存分に映っていた。
他にも美術館をテクテク歩くシーンがあり、そちらは監督が考えたかっこいいセットを見せてやろうというシーンになっていた。
さらに、色味も全てのシーンきれいなのである。
ここまででおしゃれが一等賞なのはわかったが、物語の面白さはというと、超絶眠くなるものになっている。
まずお話がモノローグを中心に展開されること。昔の話であり、もう結果は登場人物にはわかっているということで緊張感がどうしても薄くなってしまう。グスタフとゼロという二人を中心に話が進むのだが、ゼロも口数が少なく、モノローグ以外の部分も一人喋りに近い。それが眠さを引き起こしている。
話の流れもただただ巻き込まれ型で目的がないので、どうでもよくなって眠くなってしまうのだろう。
おしゃれで見た目はかっこいいが中身はぺらい、中身がともなってこそ真のイケメンである。